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一般貨物自動車運送事業の「役員法令試験」を徹底解説!


はじめに

一般貨物自動車運送事業を始めるためには、「役員法令試験」の合格が不可欠です。この試験は単なる形式的な手続きではなく、法令遵守体制が整った適正な事業者であることを証明する重要な要件のひとつです。

本記事では、試験の概要、出題傾向、難易度、そして合格のための具体的な対策方法までを、行政書士の視点から分かりやすく解説していきます。事業開始に直結するこの試験を確実に突破するために、ぜひ最後までご覧ください。


役員法令試験とは?

役員法令試験とは、一般貨物運送事業の許可申請を国土交通省に提出した後、その法人の役員が必ず受験しなければならない重要な試験です。この試験に合格することで、初めて事業を開始することが可能となります。

試験は全国の運輸支局で奇数月(1・3・5・7・9・11月)に実施され、不合格の場合でも2回まで受験可能です。しかし、初回で不合格となると次回の試験は2か月後になり、事業開始が大幅に遅れる可能性があります。さらに、2回とも不合格になると許可申請自体が無効となり、再申請と再審査が必要になります。このようなケースでは、開業までに6か月以上の遅延が発生する恐れがあります。

また、この試験は1回の実施につき1名の役員しか受験できません。複数人の役員がいる場合でも、代表して1名のみが受験対象となるため、誰が受験するかの判断も重要です。

このように、役員法令試験においては、しっかりとした準備を行い、初回での合格を目指すことが最も重要なポイントです。


試験の難易度と地域差

役員法令試験の難易度は、全国で統一されているわけではなく、各運輸局ごとに出題傾向や形式に違いがあります。受験する地域によって、対策の方向性を調整することが必要です。

九州地方は最も難易度が高く、労働基準法や労働安全衛生法、下請法の細かな表現や語句の違いまで問われる問題が多く出題されます。高度な理解と1か月以上の学習期間が求められます。

関東地方は九州に次ぐ難易度で、出題範囲が広いため、全般的な法令知識と深い理解が必要です。

東北地方は比較的難易度が低く、過去問と同様の問題が繰り返し出題される傾向が強いため、短期集中型の学習でも対応可能です。

その他の地域(中部、近畿、中国など)では大きな難易度の差は見られず、標準的な試験内容となっています。

受験する地域の傾向に応じた対策を立て、過去問の分析をしっかり行うことが合格の鍵です。


出題形式と合格基準

試験は合計30問で構成されており、○×形式が25問、選択式問題が5問出題されます。試験時間は50分で、合格基準は80%、つまり24問以上の正解が必要です。

試験中には関連法令の条文集が配布され、参照が認められていますが、200ページ以上の内容から必要な情報を探すには時間的制約がありますので、あらかじめ必要な知識を身につけておくことが求められます。

また、近年では選択問題の比率が増加し、選択肢の文言が複雑化しています。正確な知識と条文理解をもとに、最適な解答を選ぶ力が求められるようになっています。


出題範囲と重要法令

試験は、以下の主要な法令を中心に出題されます。出題頻度や内容を踏まえて、重点的に学習しましょう。

貨物自動車運送事業法・関係省令

出題頻度が最も高い分野です。許可基準、申請手続き、安全管理義務など、実務に直結する内容が中心です。関連省令には施行規則、輸送安全規則、事業報告規則があります。

道路運送法

旅客運送を主としますが、事故報告や自動車事業の管理に関する規定が貨物運送にも関係しています。

道路運送車両法

車両の登録、ナンバープレートの交付、保安基準など、安全と公害防止に関する内容です。

道路交通法

交通安全や道路利用のルール、安全講習などが出題対象になります。

労働基準法

労働条件の最低基準、労働時間、休憩、休日、時間外労働に関する規定など。トラック運転者の労働時間等の改善基準(2024年施行)も重要です。

労働安全衛生法

労働者の健康と安全を守るための制度。健康診断や夜勤、作業環境の整備についての出題があります。

独占禁止法・下請法

公正な取引の確保を目的とし、優越的地位の乱用や取引上の不当行為を規制する内容です。発注者の義務と禁止行為に関する理解が求められます。


効果的な試験対策法

過去問を活用した学習と応用力の強化

試験対策として最も有効なのは、過去問題の活用です。繰り返し出題される傾向のある問題を重点的に対策し、単なる暗記ではなく、なぜその答えになるのかという根拠まで理解することで応用力が身につきます。

条文集の効果的な使い方

試験中に配布される条文集は、限られた時間内で使いこなすための準備が必要です。付箋やインデックスをつけてよく出る条文に素早くアクセスできるようにし、日頃から読み慣れておくことで、数問を確実に拾えるようになります。

解説動画・講座の活用による理解の深化

近年では、専門家による動画や講座が充実しています。難解な法律用語や制度の背景をビジュアルで理解でき、文字情報だけでは得られない理解の定着が可能になります。複数の学習手段を活用することで、効果的に合格力を高めることができます。


受験前の注意点と準備

受験者の選定と学習時間の確保

まず、誰が試験を受けるかを早い段階で決めておきましょう。1回の試験につき1名しか受験できないため、責任感があり、学習時間を確保できる人物を選ぶことが大切です。

試験スケジュールと準備期間の確保

申請後すぐに試験日程が決まる場合もありますので、申請前から学習を始めておくと安心です。最低でも1~2か月の準備期間を設け、段階的に学習を進めていくことが望まれます。

不合格時のリスク管理とスケジューリング

初回で不合格になると2か月後の再試験まで待たなければならず、それでも合格できなければ許可が無効となります。再申請からやり直すことになるため、事業開始が大きく遅延します。スケジュール管理と学習の進捗確認を怠らず、確実に合格できる体制を整えましょう。


おわりに

役員法令試験は、一般貨物運送事業を開始する上で避けて通れない重要なプロセスです。法令遵守の姿勢を行政に示す機会であり、事業の信頼性にも関わるものです。

過去問の活用、法令の理解、動画などの学習ツールの併用を通じて、確実な合格を目指しましょう。行政書士など専門家のサポートを受けることも、短期間で効率的に学習する上で有効な手段です。

初回合格を実現し、スムーズな事業立ち上げに向けて、今すぐ対策を始めましょう。